もうそばにいるのはやめました。
「これで今回の委員会は終わりです。皆さん、ありがとうございました」
委員長は一礼してから、わたしを指名した。
「ソロ演奏について詳しく話が聞きたいので、そこのきみは残ってもらっていいですか?」
「は、はい!」
「あたしは先戻ってるね。もしまだ教室に相松くんがいたら、あたしからエンディングのこと伝えておくよ」
「うん、わかった。ありがとう。また明日ね」
にこやかに手を振って、穂乃花ちゃんは視聴覚室をあとにした。
もしかして気遣ってくれたのかな。
わたしが円を避けてることを察して。
これからも穂乃花ちゃんの優しさに甘えるわけにはいかない。
変わらなきゃ。
器用に立ち振る舞えるように。
「竜宝のお嬢さん」
委員長の元に行けば
委員長は自分の左胸に手を当てて、華麗に礼をした。
さながら執事のよう。
「お久し振りですね」
「もう10年くらい経つでしょうか。お久し振りです」
プリーツスカートの右端と左端を軽くつまみ、わたしもお嬢さまだったときみたく礼をする。
お互いに顔を見合わせて笑い合った。
「お嬢さま、きれいになりましたね。昔からきれいでしたが、もっと磨きがかかりました」
「ちょっ、やめてください!社交辞令はけっこうです……!」
「社交辞令じゃありませんよ」
「うっ……。……そ、それに……!」
「それに?」
「わたしはもうお嬢さまじゃないですし、学校では後輩なんですから敬語もやめてください。というか今までだって、子どもだけのときは気楽にしていたでしょう?」
「あはは、そうだね。なつかしいな」