もうそばにいるのはやめました。
「ナツくんはその……“生涯の主”?って人を見つけてないんですか?」
「うん、まだ。弟が早すぎるんだよ。普通は成人してから『この人に一生仕えるぞ!』って決めるのにさ」
「そうなんだ!?」
「だから俺はまだ執事でもないよ。ただのコーコーセー」
八文字家の人間は代々メイドや執事など、主人に仕える職に就く。
わたしの元執事も、ナツくんも、例外ではない。
現に会社が倒産するまでは、八文字家の人間が何人かわが家に仕えていた。
「執事を育成する学校とかに通うんじゃないんですね」
「そういう学校もあるけどね。八文字家は昔から公立校に行かせるんだよ。一般的な常識とか集団行動とか身をもって学ばせるためにね。弟も近くの中学校に通ってるよ」
思い返してみれば……わたしが学校に行ってるときは、ナツくんの弟も学校に行っていたっけ。
そっかあ、公立の学校に行ってたんだ。
「でもまさかお嬢さまと同じ学校なんてね。びっくりだよ」
「わたしもですよ!今も信じられないくらい!」
「……弟に自慢したらどうなるかな……」
「え?」
「いんや、なんでも?同じ委員同士、これからよろしくね」
元気よく返事をすると、ナツくんがパチンと一回手をたたいた。
「世間話はこれくらいにして、そろそろエンディングについて話そうか」
また委員長の顔になった。
そのことで残ったんだった!
話に夢中になりすぎてたよ……。
円の話なら、よりいっそう夢中になっちゃいそう。