もうそばにいるのはやめました。




『……くっそ、やられた』



勢いよく閉ざされた扉。

その奥から嘲笑が聞こえる。



『ざまあみろ!』


『調子のってるお前がいけねぇんだからな!』



誰もいない広々とした部屋に閉じこめた犯人が、扉越しにわーわーわめいてる。


犯人は2人。

どちらも俺と同い年くらいの男子だった。



扉を開けようとしても、ガタガタ音が鳴るだけでちっとも開かない。


外からあいつらが扉を押さえてるんだ。



『おい!出せよ!!』


『出すわけねぇだろ!』


『これでコンクールに出れねぇな!』



また耳ざわりな笑い声。

最悪だ。


今日は小学生を対象にした、バイオリンのコンクールがある。


この建物はその会場で
小学4年生の俺もコンクールに参加するためにやってきた。



控室で最後の調整をしていたら、見知らぬ男子たちが『なあ!ちょっと来い!』って声をかけてきて。


あわてた感じだったからついてってやったのに、この部屋に押しこめられてこのざま。



持っていたバイオリンも奪われた。



『俺がなにしたって言うんだよ!』


『お前が出てるせいでいっつも賞がとれねぇんだよ!』



……完全に八つ当たりじゃねぇか。


ふざけんな。俺のせいじゃねぇだろ。

お前の努力不足だろうが!


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