もうそばにいるのはやめました。
『とりあえず戻りますよ!』
『はーい!』
2人がいなくなってから、ゆっくりと扉を開けた。
さっきの女子、誰だったんだろう。
『……って、やば!俺も行かねぇと!』
控室に戻ると、部屋に閉じ込めた男子2人がいた。
まだ帰ってなかったのか。
目が合うとにらまれたから、思い切りきつくにらみ返してやった。
気まずそうに逸らされる。
勝った!!
控室を見渡しても、さっきの女子らしき人物はいなかった。
キョロキョロしていたせいか、スタッフがバイオリンを届けに来てくれた。探してると思われたのだろう。
俺の大事な宝物。
やっと手元に戻ってきた。
タイミングよく俺の番が回ってきた。
ステージの真ん中に立つ。
両親も観てる。
審査員には有名なバイオリニストもいる。
あの女子もどこかにいるのだろうか。
……緊張する。
だけどあの女子みたく、俺も楽しく演奏したい。
まぶたを閉じて想起する。
最悪だったはずの今日が最高になるように奏でよう。
気づいたら緊張は消えていた。