もうそばにいるのはやめました。
黒板に書かれた問題は2つ。
前に出てどっちも解けばいいのかな?
「相松!お前も解け!」
「……っす」
わたしが立ち上がったと同時に、先生が名指しした。
ドクン、と脈を打つ。
めずらしい。
円もぼーっとしてたの?
なにを考えてたんだろう。
今でも挨拶すらまともにできてないわたしのこと、ちょっとは考えてくれてたりする……?
……あぁ、ほら、また円のこと。
いいかげん変わんなきゃって。
ダメだって。
何度も言い聞かせてるつもりなんだけどな。
仕事中は忙しくても、ささいなきっかけでぶり返す。
同じクラスじゃなかったら、席が遠かったら、そのきっかけ自体少なかっただろうに。
うじうじしてる自分が嫌い。
未練たらたらなところがやだ。
告白する前まで、恋してる自分が大好きだったな。
「できたか?」
「……はい、解けました」
「俺もできました」
黒板の前で並んで立ってるだけで、心臓がドキドキうるさい。
黒板に書いたわたしの字、すごく汚い。
逆に円の字はきれい。
わたしだってもっと上手に書けるもん。
字が下手くそなのは円が隣にいるせいだよ。