もうそばにいるのはやめました。
「……円、あ、ありがとう……。いいよ戻って。授業あるでしょ?」
わたしは大丈夫だから。
そばにいなくていいよ。
突っぱねたのに、円はベットをカーテンで囲むとベットに腰かけた。
ギシリとスプリングが鳴る。
「な、なにしてるの?戻っていいってば」
「お前が寝るまでここにいる」
……どうして。
円の目尻がやるせなく垂れ下がった。
「どうせ委員会の仕事を張り切りすぎて、寝不足とか貧血になったんだろ」
「……ち、ちがうよ」
「ちがくねぇだろ。今朝から顔色悪かったじゃねぇか」
え?
今朝から?
「……もしかしてずっと気にかけてくれてたの?」
さっき先生に指名されたのは、上の空だったんじゃなくてわたしを心配してたから?
ねぇ、否定してよ。
そうしないと、また自惚れちゃうよ。
「……気にするだろ。目の下にでっかいクマあるし」
「えっ!」
とっさに目元を手で覆う。
「手も絆創膏ばっかだし」
「あっ!」
わたしの手に円の指が優しく触れる。
ちょっと冷たい。
この温度がいとしい。
泣きたくなるほどに。
『こほっ、こほっ』
『おかゆ作ってやったぞ』
『ああっ、近づかないで!風邪うつしちゃう……』
『俺の心配してる場合じゃねぇだろ。ほら食え』
『んっ!……おいしい……』
『当たり前だ』
『ありがとう』
『礼もいらねぇよ。こういうときくらい甘えろ』