もうそばにいるのはやめました。
*
暖かなライトの下、整然と並んでる楽器たちを眺める。
ギター、ドラム、ピアノ、バイオリン、サックス……。
メジャーな楽器はだいたいそろってる。
「竜宝さん、今日学校で倒れたんだって?」
「えっ、なんで知ってるんですか!?」
レジに立っていると、店長が心配そうにうかがってきた。
あ、店長のお腹、またぽっちゃりしてきた。
奥さんの料理をついつい食べすぎちゃうって言ってたっけ。
幸せ太りかぁ。すてきだなぁ。
「さっきお母さんから連絡来たんだよ。大丈夫なの?」
「大丈夫です!元気になりましたから!」
昼休みの間たっぷり寝たら治った。
放課後になって一旦帰宅したら、たまたま今日は夜勤だったお母さんが手厚く出迎えてくれた。
『今日はバイトがあるからもう行くね』
って伝えても
『体調悪いのにバイト行くの?今日は休めば?』
って家を出るぎりぎりまでそわそわして。
まったく、過保護なんだから。
「元気ならいいけど……体調悪くなったら言ってね?」
この楽器店で働き始めて半年くらい経つ。
初めてのアルバイトで数え切れないくらい失敗した。
そんなわたしを店長はクビにすることなく、一から仕事を教えてくれた。
店長の寛大さもバイトを続けてる理由のひとつだ。