もうそばにいるのはやめました。






暖かなライトの下、整然と並んでる楽器たちを眺める。


ギター、ドラム、ピアノ、バイオリン、サックス……。

メジャーな楽器はだいたいそろってる。



「竜宝さん、今日学校で倒れたんだって?」


「えっ、なんで知ってるんですか!?」



レジに立っていると、店長が心配そうにうかがってきた。


あ、店長のお腹、またぽっちゃりしてきた。

奥さんの料理をついつい食べすぎちゃうって言ってたっけ。


幸せ太りかぁ。すてきだなぁ。



「さっきお母さんから連絡来たんだよ。大丈夫なの?」


「大丈夫です!元気になりましたから!」



昼休みの間たっぷり寝たら治った。


放課後になって一旦帰宅したら、たまたま今日は夜勤だったお母さんが手厚く出迎えてくれた。



『今日はバイトがあるからもう行くね』

って伝えても


『体調悪いのにバイト行くの?今日は休めば?』

って家を出るぎりぎりまでそわそわして。



まったく、過保護なんだから。



「元気ならいいけど……体調悪くなったら言ってね?」



この楽器店で働き始めて半年くらい経つ。


初めてのアルバイトで数え切れないくらい失敗した。


そんなわたしを店長はクビにすることなく、一から仕事を教えてくれた。


店長の寛大さもバイトを続けてる理由のひとつだ。


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