もうそばにいるのはやめました。
文化祭の出し物を決めたときの会話がよぎる。
『メイド喫茶は?』
『メイドより執事がいい~!』
『ウチのイケメンをこういうときに利用しなくてどうするの!』
『いやいや、それを言うなら前を見てみろ。斎藤さんのかわいさは異次元だぞ』
『いやいやいや!このクラスには相松くんと武田くんの二強がそろってるんだよ!?』
利用。異次元。二強。
……なるほど。
あのときクラスメイトが狙っていたのはこういうことだったんだ。
そりゃ人手も足りなくなるよね。
穂乃花ちゃんの接客に満足した男の子たちが帰り、席がひとつ空いた。
そこに女の子のグループを案内する。
「お帰りなさいませ、お嬢さまがた」
「きゃっ!お嬢さまだって!」
「照れる~」
「くるしゅうないぞ」
「あはは!なにそのキャラ!」
先ほど落ち込んでいたのがウソみたいにはしゃいでる。
もてなす側になるのは初めてだけど、なんだか心がぽかぽかする。
わたしを世話してくれていた使用人たちもこんな気持ちだったのかな。
女の子たちにメニューを渡したら、また次の接客。
席が空き次第、案内をする。
この繰り返し。
列が長い分お客さまは途切れず、わたしはクラスメイトと一緒にずっと動き続ける。
喫茶店で働くのって体力がいる。