もうそばにいるのはやめました。


20分ほど経過し、だんだん接客に慣れてきた。



「ごめん。あたしそろそろ委員会の仕事に行くね」



穂乃花ちゃんが抜けたことにより、男の子のお客さまが激減した。


穂乃花ちゃん効果すごい……。



列の長さも短くなってきた。

クラスメイトにも余裕が生まれる。


やっとひと息つけるかも。



「あー!!!」



女の子2人組を中に招くと、はちきれんばかりの大声が耳を突き刺した。


なに!?

びっくりして振り向く。



「え……?」



さらにびっくりした。



「姫!!!」



なんで彼がここに……?


全速力で寄ってきた彼を前に、声が出ない。




「う、ウソ……。夢?幻覚……?」


「夢でも幻覚でもないっす!本物っすよ!」


「本当に本物?」


「そうっす!……あぁようやく会えましたね」




その栗色の髪も

かぶってる紺色の帽子も

涙ぐんだヘーゼル色の瞳も


最後に会ったときのまま。



幼さのにじむ顔にそうっと触れる。


大きな口がいっそう大きくなって、ふにゃりとやわらかくなった。



その人なつっこい笑顔も変わらないね。



「ハルくん……!」


「姫!」



たまらず抱きついた。


力強く抱きしめ返される。


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