もうそばにいるのはやめました。
――痛みが来ない……?
おかしい。
とっくに倒れてるはずなのに。
うっすらまぶたを開けてみる。
「……ま、どか……?」
なぜかすぐそばに円がいた。
え。
どうして。
頭が真っ白になる。
「寧音……大丈夫か?」
……あ。
理解するのに10秒ほどかかった。
円はわたしに覆いかぶさって、看板を右腕で押さえてくれたんだ。
「どうして……っ」
円、どうして。
わたしを助けてくれたの……?
全て聞き終える前に、左腕で頭をくるまれた。
胸元に寄せられたら、円がどんな顔をしてるのか見えないよ。
円、痛くない?
苦しくない?
ねぇ。
円。
騒ぎを聞きつけた武田くんとハルくんが、両端から看板を立て直した。
「ケガしてないっすか!?」
「円が守ってくれたからわたしは……だけど……」
隣の円を見つめる。
円の表情が引きつっているのが気になる。
もしかして……。
「円、大丈夫か!?」
「……っ、ああ、だいじょ」
「うぶじゃなさそうだな」
円は右腕をかばっていた。
看板が落ちてきた衝撃で右腕を痛めたんじゃ……!?
「円!」
「ね、寧音……?」
「保健室行くよ!!」
「いや、俺はほんとにだいじょ」
「うぶじゃないから行くの!!」