もうそばにいるのはやめました。
エンディングまで時間がない。
文化祭で使われていない音楽室を借り、何回もバイオリンを弾いた。
指の傷が治っていてよかった。
「姫!完成したっす!」
「ほんと!?」
ハルくんにはドレスの作製を頼んだ。
不思議の国のアリス風だったメイド服が、短時間でドレスに変身!
あまったメイド服用の布をつぎ足し、飾りをほどこしてできあがった。
うしろ側の丈が長い、ガーリーかつ大人っぽいドレス。
「かわいい!!」
即席だとは思えない。
技術とセンスが各段に上がってる。
わたしのヨレヨレな縫い跡もうまく隠してくれてる。ありがたい。
「ごめんね、ハルくん。今日はお客さまなのに」
「いいんすよ!姫の力になれてうれしいっす!」
ハルくんにうしろを向いてもらい、早速ドレスを試着する。
うん、サイズもぴったり。
どこもきゅうくつじゃない。
「カンペキだよ!ありがとう!」
「次はヘアメイクっすね!」
「うん、よろしく!」
「任せてください!」
ハルくんの手にかかれば、クセの強いわたしの髪は素直ないい子ちゃんになる。
指どおりがよくて、甘い香りがして。
女子力がアップした気分。
穂乃花ちゃんに貸してもらったメイク道具で、目元を中心に彩っていく。
「できたっす!」
手鏡に映ったのは、お嬢さまのわたし。
この姿になつかしさをおぼえてしまう。
それくらい昔の話。