もうそばにいるのはやめました。
きみの曲
「繰り返し放送します。まもなくエンディングとなります。今年の体育館ステージのエンディングは、竜宝寧音さんによるバイオリンのソロ演奏です」
体育館のステージ前を埋めつくす生徒。
数に比例して高まっていた期待が、徐々に薄れていった。
落胆。
不平。
興ざめ。
生徒の興味が消え失せているのが一目りょう然。
冷めた反応があいつにも届いてないといいけど……。
「相松くん」
体育館の壁によりかかっていた俺に、委員会の仕事を終えた斎藤が近づいてきた。
じゃっかん距離を空けて斎藤も壁に背をつける。
「相松くんはステージ前じゃなくていいの?」
「斎藤こそ」
「あたしはここからでもよく見えるから」
「俺も」
「そっか」
会話がはずまない。
沈黙が多発するのは、どちらも彩希みたいにおしゃべりじゃないのもあるだろうけれど……
斎藤が俺に壁を作ってるせいもあるだろう。
『円、狙われてんじゃね?』
もし本当に狙われてるとしたら
それは好意じゃなくて――。
「……腕」
「え?」
「もう大丈夫?」
「……ああ、平気。もう痛みもない」
「そっか。軽傷で済んでよかったね」