もうそばにいるのはやめました。
「あたし、その子の――寧音ちゃんの演奏に聴き惚れちゃって。すごく、あこがれたの。だからこの学校で再会したときは驚いたし、うれしかった」
だけど、と。
にくらしげに一瞥される。
「寧音ちゃんは相松くんばっかり見てた。相松くんも寧音ちゃんにかまってて、ずるいって思った。相松くんだけ寧音ちゃんを独占して……あたしだって仲良くなりたいのに!」
「……俺は別にかまってもねぇし、独占もしてねぇよ」
「してるの!まさか無自覚?」
「は?」
「自覚してないんだね……。とにかく!あたしは2人の仲がうらやましかったの!」
「……はあ」
「ケガさせたのは悪いって思ってるけど、相松くんも悪いんだよ?寧音ちゃんを独り占めしたりするから。避けられてるくせに」
いやいや、待てよ。
おかしいだろ。
なんで俺が悪いんだよ。
それに最後の一言はよけいだ。黙れよ。
斎藤てめー、1ミリも反省してねぇな?
だんだん腹が立ってきた。
俺もなにか言い返してやろうか。
「……なんで俺にその話をしたんだよ」
いら立ちを抑えこみながら右腕をさする。
「そっちが聞いてきたんでしょ」
「そうだけど……斎藤がやったっていう証拠はねぇし、話さなかったほうが斎藤には都合よかったんじゃねぇの?」
「……都合よくないよ」
「なんで」
「相松くんが寧音ちゃんに告げ口するかもしれないでしょ。そしたらあたしの好感度が下がって、寧音ちゃんと仲良くできない。だったら相松くんに白状して、口止めしておいたほうが確実かなって」
……こっわ。
さらっと口止めって言いやがったぞこの女。