彩りのある場所で、恋を
「赤系の色って、心を元気にしてくれるような気がして好きです。艶紅とか茜色とか……」

「岡田くんに確かにぴったりですね」

そう笑った先生の顔に、なぜか心が動いた。そして先生を気付けば目で追うようになっていて、先生と少しでも話したいと思うようになった。

玉井先生とたくさん話して、玉井先生の好きなものをたくさん知った。そして、国語がもっと好きになったんだ。

玉井先生の好きな和歌は、大伴坂上郞女の「恋ひ恋ひて逢える時だに愛しき言尽くしてよ長くと思はば」。意味は、恋して恋して、やっと逢えた時くらい、情け深い言葉をありったけ言い尽くしてください。これからも二人の仲を長く続けようと思うなら。

玉井先生の好きな古典は、伊勢物語。あとは竹取物語も好きらしい。

古典や和歌の舞台となった場所へ行くのも好きだと言っていた。先生は、どんな目でその場所を見ているんだろう。一緒に見に行きたくなる。

「松島や ああ松島や 松島や という俳句がありますが、言葉にできないほどの美しさとはどんなものか見てみたいですね」
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