この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
楽しい時間はあっという間にすぎて、気づけばもう夕方六時を回っていた。マンションに着くとあたりは夕焼け色に染まっている。
夕陽を背にしながら並んで立つと影ができて、その影は仲良さそうにくっついていて少し恥ずかしい。
「なんか名残惜しいな」
さっきまでとはちがった澄まし顔の晴くんがポツリとつぶやいた。
「私も同じこと思ってた」
明日またバスで会えるのに、バイバイしなきゃいけないのがすごく寂しい。
「今日はありがとう。私、晴くんといるときが一番幸せだよ」
「…………」
「じゃあね、送ってくれてありがとう。また明日!」
本格的に寂しくなる前に手を振って去ろうとした。でも──。
「待てよ」
背を向けると、肩をつかまれ振り返らされた。
目を見開く私をよそに、晴くんの顔がすぐそばにあって一気に距離が縮まったかと思うと唇に柔らかいものが当てられる。
えっ……?
それは一瞬の出来事だった。
驚いて固まる私をよそに、晴くんが至近距離で唇のはしを持ち上げた。
「はは、固まりすぎな」
い、今……キ、キス、した?
自覚してしまうと恥ずかしくてたまらなくなった。ボッと全身に火が灯ったように熱い。
自分の唇に手を当て、必死に冷静なフリをする。そうでもしないと心臓が持ちそうにない。
ここに晴くんの唇が……唇が……。
キスしたなんて、信じられない。
どうしよう……まともに晴くんの顔、見れないよ。
それなのに晴くんは笑っているし、私とちがって余裕があるようだ。
「じゃあな! また明日!」
「え、あ……」
うつむく私の頭をポンポンと撫でて、晴くんは走り去ってしまった。
ズルいよ、晴くん。私ばっかり、どんどん好きになってる。これ以上どうすればいいの。唇の熱はいつまでも引かなくて、鼓動がものすごく早く感じる。
手を当てなくてもドキドキしているのがわかって、胸が苦しかった。