この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

美奈ちゃんは噂好きだけど、悪口や人が傷つくような話は絶対にしなかった。きゃあきゃあ騒いで、楽しむだけ。だから私も聞いていて楽しかった。

「私、美奈ちゃんの噂話好きだよ。だから、これからも変わらない美奈ちゃんでいてね」

「ひ、ひまちゃん……なんていい子! 大好き!」

ガシッと抱きつかれて、私も抱きしめ返す。熱い抱擁に、クスクスと笑いがもれた。しばしの間友情をたしかめ合って、美奈ちゃんはすっかり笑顔を取り戻した。

「あたし、明日からは前を向いて生きる。落ちるとこまで落ちたし、あとは上がるだけだよね」

「そうだよ、その調子」

「わ、もうこんな時間か。八時って、どんだけ歌ってたんだろ」

「え、もう?」

今までこんなに遅く帰ったのは塾以外ではないかもしれない。とっさにスマホを確認すると、母親からメッセージが届いていた。

『今何時だと思ってるの?』

『早く帰ってきなさい』

『なにしてるの?』

どことなく厳しい口調。怒っているのかな。

なんとなく憂うつになる。

帰りたくないな、あんな家に。

私はまた無理に口角を持ち上げて、適当な言葉でごまかすのだろうか。そうしてる自分の姿を想像するだけで、逃げ出したい気持ちになる。

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