この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

駅で美奈ちゃんとバイバイしてから足が動かなくなった。駅からマンションまでは徒歩で十五分。歩いて帰るのは、少し大変。でも歩くしかない。

自然と足が晴くんのバイト先のカフェに向いた。もう終わって帰っているかもしれない。でもひと目だけでも会えたら元気になれる。

お店の電気が消えて中は真っ暗。すでに閉店しているようで、ひと気はない。

お店の裏に回ると、ちょうど裏口のドアが開いた。

晴くんかな?

期待を弾ませながら、少し遠くでそこを凝視する。出てきたのは制服姿の佐々野さんだった。それからすぐに気だるげな晴くんが出てきた。

「あー、今日も疲れたよね」

「だな」

「日向くん、ラストでオーダーミスしまくるから大変だったよ」

「あー、悪い」

だんだんと近づいてくる声に、私はとっさに細い路地に隠れた。

「いつもごめんね、送ってもらっちゃって」

「べつに、通り道だし気にすんな」

なんの違和感もなくふたりが並んで歩く姿に、動揺が隠せない。

ふたりはいつの間に仲良くなったの?

毎日一緒に帰ってるの?

胸の奥からモヤモヤがせり上がってくる。

キリキリと胃が痛んで、見ていたくないのにふたりの背中から目が離せない。遠くから聞こえる佐々野さんの笑い声に、思わず耳を塞ぎたくなった。

私って、どうしてこんなに弱いんだろう。ささいなことに振り回されて、上がったり下がったり。なにがあってもうろたえない強い心がほしいのに……いつまで経っても手に入らない。

私は静かにその場をあとにした。

そして部屋に閉じこもる。

寝る前に晴くんからメッセージが届いたけど、なんとなく開く気にはなれなくて。放置したままベッドに入って目を閉じた。

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