この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

夜、ベッドに入っても寝ることはできなかった。

夜中の三時に起きると、薄暗い廊下を歩いてトイレに行った。

こんな遅くだというのに、病棟内はバタバタと慌ただしく看護師さんが行き来している。

廊下の隅にポツリと人影があって思わず叫びかけた。口元を押さえてグッとこらえる。

ゆ、幽霊……?

いやいや、そんなわけないよね。

私、オカルトとか信じてないんだからっ。

バクバクしながらゆっくり歩を進める。どうやらそこにいたのは人のようだ。スマホを耳に当てて電話している。

「はい……っうっ、たった今、息を引き取って。とにかく、早く、きて、ください……っ」

心臓がヒヤリと凍えた。

息を引き取った……。

そう言った?

死んじゃったってことだよね……。

病院だ、なにがあってもおかしくはない。

だけどこんなに身近に、そんなことがあるなんて。

ピタリと足が止まって、その場から動けなくなる。非常階段の電灯に照らされた男性の顔は、涙でぐちゃぐちゃだった。

二十代くらいの若い男性は、壁に寄りかかりながらずるずるとその場に崩れ落ち、声を殺して泣いていた。

知らない人であっても、心苦しくなる。

「なんで……なんでだよっ……結婚しようって、約束、したのに……っ」

むせび泣く声に胸が張り裂けそうだった。あまりにもツラくてそこからかけ足で部屋に戻る。

「はぁはぁ……」

心臓が冷たい。不安と焦燥でバクバクしている。

あの人はきっと恋人を亡くしたんだ……。

布団に潜って目を閉じる。全身がカタカタと震えて止まらない。

泣きたくもないのに涙が浮かんで、次から次に頬に流れた。

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