この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

朝になって母親が迎えにきても、どこかでまだ現実を受け入れられない私がいた。夢だったんじゃないかな。

でも、昨日の男性の泣き声がやけにリアルで頭から離れない。それに目覚めたら病院だったから、ガッカリした。

これは夢じゃない、夢なんかじゃ……ない。現実なんだ。嫌でもそれを思い知らされた。

朝になると男性の姿はもちろんなくて、昨日は人がいた個室が空き部屋になっていた。

「帰ろうか」

「うん」

「…………」

眉を下げた母親の顔。そんな目で見ないで。私はかわいそうな子なんかじゃない。

「なに?」

「ううん、なんでもないの。ただ、大丈夫かなって」

「大丈夫だよ」

「そう? だったらいいの。でもツラかったら」

「早く帰ろう。疲れた」

ひとりになりたい。同情なんかされたくない。

家に帰ってきてから部屋に引きこもっていると、ドアがノックされた。

「ひまちゃん、夜ご飯食べられそう?」

おずおずと私の機嫌をうかがうような態度が気に入らない。同情されているのがひしひし伝わってきた。

「いらない」

「でも、なにか食べなきゃ体力が。お昼も食べてないんだし」

「ほっといてよ!」

そう言って布団に包まった。早くどっか行って。私にかまわないで。私の気持ちなんて、誰にもわからない。

もう疲れた……。

笑えない。

もう嫌だ。

なんで私なの?

「ふっ……うっ……」

堪えきれなくなって涙があふれた。泣くと呼吸が苦しくなって、脳に酸素が足りなくて疲れる。泣いちゃダメなのに……。

次から次へと出てきて止まらない。

声を押し殺して泣いていると、いつの間にか部屋の前から母親の気配が消えていた。

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