この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

抗がん剤の点滴は1クールの中で一日だけ。それも八時間ぶっ続けでおこなわれる。先生が薬剤を調整して、何種類か併用するらしい。

点滴が終わると一週間は起き上がれないほどツラいけど、残りの二週間は比較的身体は楽だった。だから院内をうろつくことができて、暇つぶしに院内のコンビニに行くのが日課になった。

コンビニの中のイートインスペースに座って、なにをするでもなくぼんやりする。

ここにきて三週間。入院生活にもずいぶん慣れた。

ここにくると病室で寝ているよりもずっと気が紛れてなにも考えずにすんだ。

細くしわしわになった手を見て自然ともれるため息。ため息を吐くと幸せが逃げるっていうけど、本当なのかな。だとしたら、どれだけ幸せを逃してるんだろう。

「うわ、やっちゃったぁ!」

お弁当が売っている棚の前でオーバーリアクション気味に頭を抱えるひとりの女性。

「財布忘れるとか、ありえない……」

効果音でもつきそうなほど明らかに落胆している。

きっとお昼ご飯を買いにきたかなにかだよね。ナース服にナースキャップ、でもここの看護師さんのとはタイプがちがうから学生だ。

入院している血液内科の病棟にも、実習生が何人かきていて挨拶をされたっけ。

「あれ? ひまりちゃんじゃない?」

「あ……」

その人には見覚えがあった。

晴くんのお姉さんの実乃梨さんだ。

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