この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

愛しい人


テレビを観ているとどの番組でもクリスマス特集がされていた。どこのディナーが美味しいだとか、今年のクリスマスプレゼントの売れ筋ランキングだとか、イルミネーションの様子だとか、街中が浮き足立っている。陽気なクリスマスソングに耳を塞ぎたくなった。

乱暴にテレビを消してリモコンを放り投げる。そしてボスンとベッドの背もたれに背中を預けた。

髪の毛がなくなった頭は寒くて首元がスースーする。母親が選んだというニット帽が手放せなくなった。

「ひまちゃん、調子はどう?」

毎日こなくていいって言ってるのに、母親はだいたいお昼すぎにいつもやってくる。そして一日の家での様子やくだらないことを一方的に話して、三十分ほどで帰っていく。大きなボストンバッグを抱えて、何日かに一度洗濯物も持ってきてくれる。

「ひまちゃん、ちょっとこれ見てみない?」

そう言われて視線だけをそこに向ける。母親はパンフレットのようなものを私に差し出した。

「なに、これ……」

「女の子だし、髪の毛がないとやっぱり気になるかなって。ウイッグっていうんでしょ? 今流行ってるって聞いたわ。好きなの選んで」

そう言われた瞬間、怒りがこみ上げた。身体の奥底が熱くなって、拳に力が入る。

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