この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
「ふふ、バラしてるじゃない。悪いと思っていたからでしょ? だったら許す。その代わり二度はないわよ」
「どうして……っ」
「ひまちゃんを愛しているからよ。だから許すの」
優しい笑顔に涙腺がゆるんだ。
産みのお母さんを忘れて、育てのお母さんを慕う自分がとても悪いことをしてるようで……耐えられなかった。目の前の人をお母さんだと認めたら、心の奥底にいるお母さんの存在が消えていくようで怖かったんだ。
『お母さん』って一度も呼んだことがないのも、ささやかな抵抗。心の中にいる、すでに消えかかっている幼いときのお母さんの記憶が消えないように。
そんな私に怒ることもなく、優しく愛情を注いで育ててくれた。
「ひまちゃんの気持ち、わかるよ。でもね、母親がふたりいてもいいんじゃないかな?」
「ふた、り?」
「産んでくれたお母さんと、育てのお母さん。どっちも大切なお母さんで、そのどちらかを忘れる必要なんてないわ。忘れられるわけ、ないじゃない……っ」
「……っ」
「だから忘れなくていい。ずっとあなたの中で大事にしまっておくの。私の心の奥にも、お母さんの思い出が眠ってる。もちろん、ふたりぶんね」
本当は……。
「ごめん、なさ、い……っ。おかあ、さん……っ、お母さん……っ」
涙が次から次へと出てきて止まらない。
忘れなくていい。その言葉は、きっと今私が一番ほしい言葉だ。
「ひまちゃん……ごめんね。あなたの気持ちに気づけなくて」
お母さんは細い腕で私をキツく抱きしめてくれた。
「おか、さんは、悪く、ないよ……」
ずっとそう呼びたかった。でも、呼べなかった。