この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

年が明けて三学期が始まっても、晴くんは毎日のように私のお見舞いにきてくれた。晴くんの学校からバスで一本、二十分の距離。

そばにいてくれるだけで心地よくて、みるみる元気になっている気がした。

でも、やっぱり抗がん剤を投与する日は副作用の影響がモロに出る。

「うぇ、げほっ……っ」

胃がムカムカして、気持ち悪い。吐き気が治まらなくて、我慢できずにとうとう、吐いてしまった。

口の中に苦い味がして思わずむせる。

「ひま、緑茶」

「あ、り、がと。ごめん、ね……」

「いいから、謝るな」

口元までペットボトルを持ってきて飲ませてくれた。緑茶の濃い味が苦味を緩和してくれて、ちょっとスッキリした。

優しく背中をさすってくれる手のひらに涙が出た。こんな姿見られたくない。かわいい私でいたいのに。

晴くんがお見舞いにきてくれた次の日から、私は個室に移った。お母さんは晴くんがきやすいように配慮したと言っていたけど、実際はどうなのかな。

「ちょっと寝ろ」

「や、やだ……せっかく、晴くんがきてるのに……」

「いいから」

ベッドから背中を浮かすと、晴くんに止められた。そして口元まで布団を手繰り寄せ、子どもにするように頭を撫でられる。

優しく微笑まれたら、もう完全に私の負け。

「帰るときは声かけてね」

「わかったよ、おやすみ」

晴くんの手を握りながらそっと目を閉じると、すぐに睡魔が襲ってきた。

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