この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

三週間がすぎて、一週間は休薬。その期間が一番ホッとする。体調もよくて、比較的落ち着いていられた。一月下旬の今日はこの地域には珍しく、雪がしんしんと降り続いている。

入院してから七キロも痩せてさらに細くなってしまった。食事もひとくち食べたらもうお腹いっぱい。でもまだ動ける。

これ以上体力が落ちたら抗がん剤投与ができないらしい。薬が強すぎて、私の身体が耐えられないんだって。だから今はがんばって食べて体力をつけなきゃ。

「お、今日はカツ丼じゃん。うまそう」

子ども用の小さなお椀に盛られたお昼ご飯を見て、晴くんがニッと笑う。寒そうな頭にはニット帽。伸びてきたから、この前またバリカンで剃ったんだって。そしたら、手がすべってケガしたって言ってたっけ。その傷を天地くんに見られて笑われたらしい。

本当……バカだよ。私のためにそこまでしなくていいのに。

「ほら、食わせてやる」

「い、いいよ」

「俺がこんなことすんの、レアなんだから甘えとけって」

「えー……私、子どもじゃないのに」

「いいから。ほら、口開けろ」

小さく口を開けると口の中にたまごの味が広がった。

「ん、美味しい」

「そりゃよかった」

晴くんがニッと笑う。

ご飯の量は普通の人の半分量のそのまた半分。その量さえも食べきれるかわからない。晴くんは私のご飯を見て最初はツラそうに顔をしかめた。ガリガリになった私を見て、ときどきツラそうな表情をする。

甘いものも受けつけなくなった。でも晴くんと食べたクレープはまた食べたい。スイーツビュッフェにだって、行きたい。そしたら、元気になれる。晴くんもきっと、笑ってくれるよね。

春になったら桜を見て、芝生広場で四つ葉のクローバーを探すの。夏にはお祭りに行って、浴衣で並んでふたりで夜空を見上げる。

手をつなぎながら花火を見てきれいだねって、笑い合いたい。

秋にはぶどう狩りに行って、あとは読書もするんだ。冬は寒いから遠出はせずに家でコタツに入ってゴロゴロしたいな。でもクリスマスはイルミネーションを見に行きたい。ふたりで寄り添ってたら、きっと寒くはないはずだから。

ふたりですごす未来。きみとすごす未来を私は夢見た。

< 212 / 242 >

この作品をシェア

pagetop