この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

三月に突入し、寒さがずいぶん和らいだ。

抗がん剤治療をやめたひまの頭には、うっすらと産毛が生えている。そして、俺の頭にも。

早咲きの桜が個室の窓から見下ろせて、ひまは毎日それを見るのが楽しみだと言っていた。

抗がん剤治療をやめたからなのか、ひまは苦しむこともなく穏やかな時間が流れている。ときには海堂や美奈、福島や歩なんかもお見舞いにきて楽しそうに話してる。そんなひまを見るのが好きだったり……。

たとえるなら冬のひだまり。色にするとポカポカ温かいオレンジが似合ってる。いるだけでその場がポッと明るくなる。

なぁ、俺だって多分一目惚れだよ。ひまの笑顔に惚れたんだ。

ずっと永遠に今が続けばいい。他にはなにもいらないから、このままでいさせてくれ。

だけど無情にも時間は流れていく。ひまの病状はますます悪化した。起き上がることができなくなり、一日中ベッドから動けない。

目を開けるのもツラそうで、そんなひまを見たら胸が痛む。

「ねぇ、晴くん……」

「どうした?」

「最後のお願い、聞いてくれる……?」

そんなこと、言うなよ……っ。

歯を食いしばり、せり上がってくる声を押し殺す。

< 224 / 242 >

この作品をシェア

pagetop