この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
「あ、いや、えと、変な意味はなくて普通に優しいなって前から思ってて」
「初めて言われた、優しいなんて」
「え? そうなの?」
「俺、学校では女子に恐れられてるから」
言いにくそうに頬をかく日向くん。
それは見た目で誤解されてるだけかと思うけど。本当は優しいのに。それを知ってるのが私だけっていうのがうれしい、かも。なーんて……そんなのどうかしてる。
話してる途中でレジの順番がきた。店員さんに笑顔を向けられ、慌ててカゴを差し出す。
会計を終えて袋に詰めてる間、支払いを済ませた日向くんが私のそばにきた。
そして袋詰めを終えた私のビニール袋をさっとつかむと、「行くぞ」と言って日向くんは歩き出した。
「日向くん、私が持つよ」
「いいよ、こんくらい。全然軽いから」
「でも」
「いいって。もう暗いし送ってく。前みたいに不良に絡まれたら大変だろ?」
「え……?」
不良に絡まれたらって……。
まさか、中学生のときのことを言ってる……?
いや、でも、覚えてないはずだよね。
日向くんはなんだか意味深に笑っていて、もしかすると全部わかっているのかなって気にさせられる。
「ほら、行くぞ」
「あ、うん……!」
だけどそれ以上は聞けなくて私は慌てて彼のあとを追いかけた。
二人で並んで歩く夜道に会話はなくて、ただただ緊張しながら足を前へと動かす。日向くんは無表情でなにを考えているかわからない。
でも、やっぱり優しい人。
だって日向くんの隣にいると心がふんわり温かくなる。こんなに癒やされるのはきっと日向くんだから。他の誰かじゃこんな気持ちにはならない。日向くんだけが私の特別。
こんなに優しくされると期待しちゃうよ。私も日向くんにとって特別な存在なんじゃないかって。いや、ダメダメ。きっとそんなんじゃないから。
そんな葛藤を繰り返しているとあっという間にマンションの下に到着した。
「うち、ここなんだ。送ってくれてありがとう」
そう言いながらスーパーの袋を受け取るために手を伸ばす。
「じゃあ、またな!」
「ありがとう……バイバイ」
片手を上げて走り去る日向くんに慌てて手を振り返した。