この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
容姿端麗、成績優秀、品行方正、冷静沈着、さらには爽やか王子だなんて呼ばれているこいつだけど、どう見ても腹黒猫かぶり男にしか見えない。それも俺の前でだけというのが厄介だ。
「それより最近はどうなんだよ?」
素早く自分の席にスクールバッグを置くと、空いていた俺の前の席の椅子に座って歩が問いかけてくる。
「最近って?」
聞かなくてもなにが言いたいのか、歩のにやついた顔を見てわかった。
「明倫の天使ちゃんと接点あった?」
明倫の天使……。
それは桃咲ひまりのことだ。
「入学当初から今も衰えず人気だよな。ちっちゃくて、色白でサラサラのブロンドヘアの美少女。晴、バスで一緒なんだろ?」
「まぁ、な」
「俺も一回見てみたいけど、俺んちからバス停まで遠いからなぁ」
うちの高校で桃咲はかなり話題になっている。バスの中の天使、明倫の天使……。密かにそんなふうに呼ばれている彼女と初めて会ったのは中学三年生の夏だった。
男たちに囲まれて泣きそうになっている桃咲を見て、いても立ってもいられなくなり無意識に助けていた。
初めて会ったのに『俺が守ってやらなきゃ』って、そう思わせる不思議な力があった。