この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
「桃咲」
わざとなのか耳元で艶っぽい声を出す日向くんは意地悪だ。
「無理せずつかまってろって」
ガッチリと腰をホールドしたまま離してくれない。私の顔は誰がどう見てもわかるほどに真っ赤で、そばに立つ日向くんが小さく笑った。
素直に日向くんの言葉に従うより他はなく、うつむきながら時間がすぎるのを待った。周囲から刺さる無数の視線はどれも女子からのものだ。
「日向くんの彼女?」
「やだー!」
ご心配なく、彼女じゃありませんから。日向くんには美人で大人っぽい彼女がちゃんといる。私なんて足元にも及ばないよ。
平坦な道になったとき、私は日向くんから離れた。
まだ心臓がドキドキしてる。密着していたときの感覚がなかなか消えてくれない。早く忘れなきゃいけないのに、どんどん熱を含んで大きくなっているような気さえする。
早く着いて、早く。そう願いながらバスに揺られた。
「じゃ、じゃあね、バイバイ」
「またな」
もう会わないほうがいい。
きっと取り返しがつかなくなる。
だから私はそう言われてなにも言い返せなかった。