この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
「おはよう、ひまちゃん。苑ちゃんもー!」
「おはよう」
「ねぇねぇ、聞いて聞いて〜!」
すぐ隣の席の派手な女子二人組がやってくると、私と苑ちゃんに挨拶してくれた。笑顔でそれに応えて三人でのお喋りが始まる。
話題を提供してくれるのはムードメーカーの美奈ちゃんだ。美奈ちゃんはメイクをバッチリキメて明るく染めた茶髪を毎日器用に巻いている。
おしゃれに抜かりがなくて、かわいい物が大好きなぽってりとしたつやつやの唇が特徴的な女の子。
話の内容は今流行りのファッションだったり、芸能人やアイドル、学校内外の人気者の男子の話だったりさまざま。
私はうんうんと相槌を打っているだけ。そうすれば時間がすぎていく。目立つことなくひっそりと、それくらいがちょうどいい。
苑ちゃんには「もっとはっきり思ってること言いなよ」って言われるけど、意見が食いちがうくらいなら言わないほうがいい。
「昨日の夜、駅で北央のプリンスを見たの!」
ドキン。
北央のプリンス……。
日向くんのことだ。
「へぇ、また喧嘩でもしてたの?」
「それがさ年上の美人と一緒だったんだよね。スタイル抜群のモデル並みの美女だったよ」
「えー、彼女かな?」
ふたりの会話に耳をそばだてる。
彼女……。
いてもおかしくはないよね。
他校の日向くんは私たちの学校でもとても有名で、なにかと話題になることが多い。
それもこれもアイドル以上に整った容姿と抜群のスタイルのせい。
日向くんはかなり目立っているから、話題になるのも頷ける。
喧嘩が強くて、毎日悪い仲間とつるんでる。
年上の美人な彼女がいる。
ワガママでかなり性格が悪い。
どれも日向くんに関する信憑性のない噂だけど、全部しっくりこないというか私の知ってる日向くんとは似ても似つかない。
だって……私は知ってるから。
あの日の日向くんの優しさを。
この三日間、一度もバスで姿を見かけなかったから心配していたけれど風邪はもう大丈夫なのかな。
出歩いていたということは元気になったんだよね?
よかった。