この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。
次の日、日曜日だったけど朝早くに目が覚めた。お腹が空いてリビングに行くとこんがり焼けたパンのいい匂いがする。
「おはよう、ひまちゃん」
微笑みかけてくる母親に、とっさに私も笑みを浮かべた。
「おはよう」
「ご飯できてるよ」
「ありがとう……」
「お姉ちゃん、おはよう」
「おはよ、あきくん。お父さんも」
「ああ、おはよう」
いつもと変わりない家族の団らん。まるで昨日のことなんてなかったかのように爽やかな朝だ。
でもずっと笑顔でいるのって結構疲れる。
「ひまり、学校はどうだ?」
「まぁそれなりに楽しいよ」
「そうか。身体はどうだ? 変わったところは? なにかあったらすぐに言うんだぞ」
「大丈夫だよ、大げさだなぁ」
あははとお得意の愛想笑いを浮かべる。
こんな自分がバカみたいだと思うのにやめられない。
「ね、今日はみんなでお出かけしましょうよ」
「僕、恐竜レンジャーのショーが観たい!」
「はは、いいなぁ。じゃあ久しぶりに車を出そうか」
楽しそうな三人の会話を聞きながら食パンを口に入れて咀嚼する。
どこにでもいる仲のいい家族。みんないつも笑っているから、私もそうしなきゃ。ワガママを言って、ふたりを困らせちゃいけない。
でもときどき、すごく息が詰まる。胸のあたりが苦しくなって沸々とした感情がこみ上げてくる。それがなんなのかはわからない。
「ひまちゃんも行くわよね?」
母親がキッチンから顔を覗かせた。笑っているけどその声はどこか遠慮がち。
「私、予定があるから」
「あら、そうなの? 残念だわ」
本当に?
そんな考えが頭をよぎる自分が嫌だ。
苦しい。
「私のことは気にしないで、三人で行ってきて」
「お姉ちゃん、行かないの?」
「うん。ごめんね、あきくん」
「えー、やだー! お姉ちゃんも一緒がいい」
「晶、ひまちゃんは忙しいんだからワガママ言っちゃダメよ」
母親があきくんをたしなめる横で苦笑いしかできない。私はごちそうさま、と手を合わせて立ち上がった。
「ひまちゃん、ごめんね。晶が」
「ううん、大丈夫だよ」