この空の下、きみに永遠の「好き」を伝えよう。

「あれは私の宝物だから、厳重に部屋に保管してるの」

初めての晴くんからのプレゼント、つけて傷ついたり、壊れたりしたら嫌だから。

「俺は見てみたいけどな、ひまがつけてるとこ」

「……っ」

「ピン留めはつけるもんだろ?」

「たしかに、そうだね」

でも私はなくさないようにきれいなまま保管しておきたい。そして使わずに錆びてすたれていくパターン。私っていつもそう。本当に大切な物はいつまでも箱に入れて取っておく。見えるところに飾って、眺めるだけで満足しているタイプ。

そういうのって一番物の価値をダメにするんだよね。

「いつかつけるから!」

「はは、そんな意気込んだ顔で言わなくても」

よっぽどだったのか、晴くんはケラケラ笑い出した。

「楽しみにしてるよ、ひまがつける日を」

「うん……!」

本当は明日にでもつけたいところだけど、だけどやっぱり大切に置いておきたい気持ちが強い。でも、いつか、ね。

「今週の土曜日って空いてる?」

「土曜日?」

「姉ちゃんがスイーツビュッフェのタダ券くれてさ。一緒にどう?」

「行く……!」

「はは、即答かよ。テスト勉強は大丈夫か?」

「うん、大丈夫! それまでにやっちゃうから! 楽しみだな」

「俺も楽しみにしてる」

バス停からマンションまではすぐで、もうバイバイしなきゃいけないのが寂しい。

でも次の約束があるから、楽しみすぎて顔がニヤける。

私って、こんなに単純なヤツだったんだ。

「じゃあ、またな!」

「うん、バイバイ!」

晴くんに手を振ると、フッと笑って走り出した。風になびいて揺れる茶髪から、いつまでも目が離せなかった。

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