KANATA～answers of your selection～

「あのぉ、どちら様ですか？」



若い女性の声がしてオレは恐る恐る振り返った。


不審者だと思われたに違いない。


今日のところはこの辺りで退散するか。



「怪しい者ではないんです。通報しないでください。失礼します！」



と言って駆け出そうとしたのだが、



「待って！」



と女性に呼び止められた。


女性がオレに追い付く。


オレはもう逃げられなかった。


でもいい。


たぶんこの人はそういう人ではない...はずだ。



「あなた、辻村さんのお知り合い？」


「えっと...その...辻村夏向さんの部活の先輩で最近連絡も取れないし、学校にも来ていなくて心配になってこちらに伺ったのですが...」


「あら、そうだったの。私も引っ越して来てまだ日が浅いけど、夏向ちゃんのことは良く知ってるわ。一週間前にばったりあったんだけどね、遠くに住むおばあさまが亡くなったから当分ここを留守にするって言ってたわよ。連絡取れないってことは相当お辛いんでしょうね」



オレは礼を言って立ち去った。