KANATA~answers of your selection~
具体的な策も見つからないまま時は過ぎ、8月になった。



「お兄ちゃんおはよう!」


「あっ、おはよ。今日も部活か?」


「もう終わったよ」


「はっ?!てか今何時?」


「午後1時23分45秒」



マジ...か。


寝過ぎだ。


昨日だって深夜1時には寝たんだから、半日は布団の中にいたことになる。



「早く起きて運動でもして下さいよ~。最近お兄ちゃんデブってきたし。だから未夢ちゃんにもフラれるんだよ」


「虹晴、お前いつそれを...」


「うん?この前良さんと未夢ちゃんが歩いてるところ見たんだよね~。あたしこういうタチだからさ、すっ飛んで聞いちゃったんだよ。そしたら、そういうことだしさ。がっかりだよ」



はあ。


もう最悪だ。


このくそ暑い時にそんな話聞かされたらますます頭狂うわ。


それにしても未夢は堂々と交際してるな。


オレへの気持ちはきれいさっぱり無くなっていうのか。


別に好きだったわけじゃないけど、それでもなんか今更ながら胸が少し痛い。


これが失恋...なのか。



「とにかく運動はしてよね。そろそろ臨床試験でしょ?健康にしておけって長内さんから忠告されてない?」


「ああ、されてるよ」


「本当に行く気あるの?妹に心配されてるようじゃ、お兄ちゃんもまだまだだね」


「分かったよ。着替えてちょっと走ってくるからメシでも食っとけ」


「食っとけって作ってないじゃん。お兄ちゃんのバカ~!」



ったく、母親よりガミガミ言う妹がいるか。


両親共に穏やかなのに、なぜ虹晴みたいな口うるさい子供が生まれるんだ?


オレには謎でしかない。


......謎。


そう言えば、辻村のことを知る策はまだ思い付いていなかったっけ。


このままだと、夏休みも何も出来ぬまま終わりを迎えることになる。


臨床試験で丸3日は眠ってなきゃならないし、ロスタイムだ。


いや、待て。


それがあるじゃないか。


臨床試験だ!


臨床試験では異なる時間軸を生きる同じ魂を持つ自分と会うことになる。


つまりだ。


過去でも未来でもいい。


平行世界に夢の中で行けさえすれば、何かしら手がかりが得られる。


別世界とはいえ、オレの過去のような世界に行けばオレと辻村の出会いが見られるかもしれないし、未来だったら辻村がどんな風に生きているか見られるから安否確認にもなる。


よし、この手でいこう。


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