キミが、消えた


 同級生の笹川栞が交通事故で亡くなった。それほど親しい間柄ではなかったけど、家が近くでたまに一緒に帰ったり、犬の散歩をする間柄だった。彼女の葬儀はしめやかに執り行われ、会場は陰鬱な空気と悲しみの涙で満ちていた。僕はもう二度と会えない彼女のことを想い、黙祷した。
 「浩二君」
 葬式会場で、僕は栞のお母さんに呼び止められた。
 「どうかしましたか?」
 と僕が尋ねると、栞のお母さんはおもむろにアルバムを持ち出して、僕に手渡してきた。
 「このアルバムにはあなたの写真が沢山収められているの。よかったら持っていって」
 僕がアルバムを開くと、確かにそこには二人で撮った写真や修学旅行での僕と栞が収められている写真が大量に存在していた。この写真の山を見た僕は、何だか胸が熱くなり、栞への想いが募ってきた。
 栞は決して美人とはいえない容姿だったけど、愛くるしい瞳と綺麗な唇をした可愛らしい女の子だった。お互い犬を飼っていたから、早朝よく二人で互いの犬を散歩させたこともあった。
 「ねえ浩二って、好きな人いるの?」
 「いきなり野暮なこと聞くなよ。いるわけないだろ」
 「あは、そうなんだ。早くよい人見つけるといいね」
 たわいのない二人の下校中の会話を思い出した。よく考えると、あの頃既に彼女は僕に気があったのかもしれない。未熟で鈍感な僕は彼女の女心に気づくことができなかった。
 栞のことを考えていたら、次第に彼女に対して特別な感情がわき始めてきた。
 だけど、そんな栞はもういない。

       2

 僕は中学三年生。受験生だ。受験勉強に集中する日々を送っているうちに、次第にあの日、微かに抱いた栞への恋心は薄らいでいった。
 その間、僕には彼女が出来た。もうこの世に存在しない栞への想いを断ち切るため、自分からクラスでも評判の美少女、滝川ゆかりに告白したのだ。ゆかりは僕の告白に二つ返事で了承してくれた。
 「本当にあたしなんかでいいの」
 「ああ、いいんだ。キミが好きなんだ」
 「里山君」
 これでいいんだ。死んだ人間を好きになるなんて間違っている。僕は若者なのだから、今を生きないといけない。今そこに生きている人間と恋をしなければいけないんだ。
 それから僕はゆかりと何度かデートをした。お互い受験生だからあまり遊びまわるわけには行かないけれど、一緒に遊園地に行ったり、
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