キミが、消えた
「そういうことよ」
ゆかりはハンバーガーを頬張り、笑っていた。
3
僕の家の飼い犬はアストラという。父親がウルトラマンが好きで、そこに出てくるウルトラマンレオの登場人物から取ったらしい。犬自体はパグなので、見た目と名前のギャップが凄い。道で名前を聞かれるたび、僕は恥ずかしい思いをしている。だけど初めて栞と犬の散歩させたとき、彼女はアストラの名前を聞いても笑わなかった。彼女のゴールデンレトリーバーはレオという名前だったからだ。
「アストラはウルトラマンレオの腹違いの弟なんだって。お父さんが言ってた」
「子供向け作品にそんなドロドロした設定はないだろう」
実際のところはわからないが、あのときの彼女の笑顔はよく覚えている。とても愛くるしくて、思わず心が揺れ動いたのを思い出した。
「これからもずっと一緒に犬の散歩ができるといいね」
そう言って笑う栞の言葉は、今考えてみると彼女なりの告白だったのかもしれない。
彼女のことを思い出すたび、栞への想いは募ってゆく。日は過ぎる度に想いは加速していく。
気が付けば僕の心の中は栞のことで一杯になっていた。
せめてもう一度、彼女に会いたい。川原をアストラを散歩させながら歩きたい。僕はそんなことを考えていた。
「彼女のこと、まだ想ってるの?」
飲食店でゆかりとデートしていたとき、唐突に彼女から厳しい言葉が飛んできた。僕は嘘をつかず、誠実に回答することにした。
「ああ、なんか前よりももっと好きになってる」
「そう」
ゆかりは視線を落とし、容器に差し込まれたストローに口をつけた。
「死んだ人を死んでから好きになるなんて、なんか切ないね。私にとっては恋のライバルだけど、戦いがいのない相手だわ。だって敵うわけないもの。相手は故人よ。どうやって勝負しろっていうの」
「それは・・・」
ゆかりの正直な告白に、僕は言葉を詰まらせてしまった。
「私、浩二君のこと、好きだよ。いや、好きになった。だって誠実だもん。ちゃんと言いづらいこと言ってくれたから。そんな男、
世の中に数えるほどもいないよ。」
「ゆかり」
「だから余計胸が苦しくなってきた。一体私はどうすればいいの。どうしたら私は彼女に勝てるの? ねえ、教えて、浩二君」
ゆかりはハンバーガーを頬張り、笑っていた。
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僕の家の飼い犬はアストラという。父親がウルトラマンが好きで、そこに出てくるウルトラマンレオの登場人物から取ったらしい。犬自体はパグなので、見た目と名前のギャップが凄い。道で名前を聞かれるたび、僕は恥ずかしい思いをしている。だけど初めて栞と犬の散歩させたとき、彼女はアストラの名前を聞いても笑わなかった。彼女のゴールデンレトリーバーはレオという名前だったからだ。
「アストラはウルトラマンレオの腹違いの弟なんだって。お父さんが言ってた」
「子供向け作品にそんなドロドロした設定はないだろう」
実際のところはわからないが、あのときの彼女の笑顔はよく覚えている。とても愛くるしくて、思わず心が揺れ動いたのを思い出した。
「これからもずっと一緒に犬の散歩ができるといいね」
そう言って笑う栞の言葉は、今考えてみると彼女なりの告白だったのかもしれない。
彼女のことを思い出すたび、栞への想いは募ってゆく。日は過ぎる度に想いは加速していく。
気が付けば僕の心の中は栞のことで一杯になっていた。
せめてもう一度、彼女に会いたい。川原をアストラを散歩させながら歩きたい。僕はそんなことを考えていた。
「彼女のこと、まだ想ってるの?」
飲食店でゆかりとデートしていたとき、唐突に彼女から厳しい言葉が飛んできた。僕は嘘をつかず、誠実に回答することにした。
「ああ、なんか前よりももっと好きになってる」
「そう」
ゆかりは視線を落とし、容器に差し込まれたストローに口をつけた。
「死んだ人を死んでから好きになるなんて、なんか切ないね。私にとっては恋のライバルだけど、戦いがいのない相手だわ。だって敵うわけないもの。相手は故人よ。どうやって勝負しろっていうの」
「それは・・・」
ゆかりの正直な告白に、僕は言葉を詰まらせてしまった。
「私、浩二君のこと、好きだよ。いや、好きになった。だって誠実だもん。ちゃんと言いづらいこと言ってくれたから。そんな男、
世の中に数えるほどもいないよ。」
「ゆかり」
「だから余計胸が苦しくなってきた。一体私はどうすればいいの。どうしたら私は彼女に勝てるの? ねえ、教えて、浩二君」