たばこ
「いいよ。戻ろうか」
煙草は、落ちて火は消える。
煙草の香りをまとった男は、煙草の代わりにやってくる。
ハマったらもう、戻って来れない。
ベッドが軋む音。
沈む感覚。
煙草の香り。
甘さと苦さ。夜の淵。
彼は知らない。
その依存性も。この気持ちも。
煙草しか目に見えていない男。
甘さを与えれば、いいと思っている。
もしも、煙草の香りを纏ったならば見てくれるのだろうか。
煙草の香りも、彼も。
本当は......。
私は、彼の煙草になりたい。