くちびるが忘れない
「課長!今戻られたんですか?」


ビクッ


颯太のデッカい声に反応して顔を上げたら


いつもの冷たい目とバッチリ合う


帰って…きたんだ…


「空港から直行ですか?」

「…あぁ」


スタスタと窓際まで歩いてくのをつい目で追ってしまった


今日はいないと思ってたし


そっか…じゃあ…今夜も


「奈生。出れる?」

『アッ。うん』


バッグとコートを持って颯太に続く


一応上司に挨拶して帰らなきゃね…


並んで窓際の席まで行くとパソコンを立ち上げていた課長が目線だけ上げた


「お先に失礼します」

『失礼します』


何か気まずい


久々の冷たい視線が突き刺さるんですが


「俺達イタリアン行くんですけど課長も一緒にどうですか?」


そ、颯太!?


何を言ってんのぉ?


ニッコリ笑うのは颯太だけ


課長はますます不機嫌そうに目を細めた


「いや…仕事残ってるから2人でどうぞ」


もちろん凍り付きそうな空気で断る


予想通り


「金曜の夜に仕事なんて寂しいですよ~」


颯太にはコノ状況が見えないの?


空気読め!


「フッ…俺は後でもっといいもん食うから」


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