くちびるが忘れない
『おはようございます。部長。今朝は京都土産のお茶です。お口に合いますかどうか』

「おはよう。京都行ってきたのか。どれどれ」


緊張の一瞬


強面の部長の顔がほっこり和んだのを確認してホッとした


「奈生ちゃん。俺にもお茶ちょーだい♪」


へっ?


私を奈生ちゃんって呼ぶのって…


まさか!?


声の聞こえた先


課長のデスクに座るのは


『甲斐さん!いつ戻られたんですか?』

「一昨日~奈生ちゃんお茶☆」

『はい。すぐお持ちします』


慌ててオフィスを飛び出し給湯室に駆け込む


ドキドキ…


甲斐さんだ


うわぁ~信じられない


何年ぶりだろう…


2年半?


今喋ったのにまだ信じられなくて


お茶を手に急いで戻る


オフィスは甲斐さんがいるだけでいつもより活気づいて見えた


『お待たせしました』

「ありがと。京都土産だって?オッ!やっぱり日本茶美味いよなぁ」

『はい。週末に旅行してきました』

「彼氏と?」

『美穂とです!』

「独身女2人旅?寂しいねぇ」


ケラケラ笑われちゃった


他の人に言われたら腹もたつけど甲斐さんはいいんだ


ずっと憧れてる人



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