くちびるが忘れない
「お前彼氏いないの?」


ニンマリした甲斐さんは面白がってる気がする


『…いませんよ』

「ふ~ん。じゃあ俺とつき合う?」


へっ…


『えぇぇぇぇぇっ!』


つ、つき合う?


甲斐さんと私が?!


オフィスって事も忘れて叫んでた


「驚きすぎ(笑)いいじゃん。俺も1人お前も1人。問題ある?」


問題はないけど急にそんな事言われても…


それに


『か、甲斐さんブラジルじゃないですか!そんな遠距離無理です!』

「来春本社戻るし。しばらくアチコチ出張で回るけど今週は日本にいるからさ。まずお試しで付き合ってみよ☆」


ニッコリ笑顔で説得力ある雰囲気にのまれて


お試し交際を承諾しちゃった


甲斐さんの彼女!!


やっぱり押しに弱すぎるよ~


いいのかなぁ


コレがもしかして京都のご利益なの?


「って事なので残業させんなよ。将太郎」


甲斐さんが私の後ろにニヤリとする


ドキン


放心状態の私の後ろで風が動いて


ふわっと掠めた煙草の匂いに身体がビクッとしてしまう


「フッ…月末ですよ。甲斐さん」


視界に入ってきた矢野将太郎はクシャッと笑う


…ムカつく


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