くちびるが忘れない
お試しが終わって甲斐さんがブラジル戻ったら


私達はどうなるんだろうね


わからない


怖い


「結城さん。おはよう」


不運


EV前でまた会ったよ


『おはようございます。木山さん』

「今夜食事行かない?」

『行きません』

「即答かよ~たまにはいいじゃん。奈生」


いきなり昔のように名前で呼ばれ驚く


社内で誤解を招く事はやめてよね


「既婚者が社内不倫か。木山」


ビクッ


他の人に聞かれた


しかも一番聞かれたくない相手に


「何だよ~矢野。これぐらい元彼特権だろ」

「ハンッ!そいつ甲斐さんのだぞ。ヘタな事すると…」

「えっ!お前甲斐さんと付き合ってんの?」


木山さんに聞かれ頷きながら


矢野将太郎の冷たい視線を全身に感じていた


何か息苦しい


木山さんは焦りだし慌ててEV前からいなくなる


気まずい私達を残して


最悪


EVに乗ると気まずさは倍増


「…お前さ…」

『はぃ…』


何なのぉ~


後ろに立つ矢野将太郎を意識しつつ


振り返る事も出来ず


「甲斐さんいるのにフラフラすんな」


フラフラ?


そう見えた?


ズキッ


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