くちびるが忘れない
フラフラする女に見えるんだ


でも…


この人には反論のしようがないのかも


私が金曜の夜だけこの人にフラフラしてたのを知られてる


そういう軽い女って思われてる


実際軽いのかも…


押しに弱くて簡単につき合っちゃって


私がそういう空気を発してるのかな


「おいっ」


ビクッ


「着いたぞ」


アッ…


思わず見上げたら冷たい瞳とぶつかって


心臓がギュッとなる


『すみません。ありがとうございます』


この人はどうしてこんな目で私を見るんだろう


軽蔑してるから?


いっそのこと無視してほしい


変に関わるとおかしくなりそう


オフィスに入ると部署内は和やかな雰囲気


中心には甲斐さんがいた


「奈生ちゃんおはよう」


わざわざみんなに断って私の席まで来てくれる


「今日出先から戻るの5時頃になるから7時の宴会ギリギリだなぁ。会社で待っててくれる?」

『はい。気をつけてくださいね。午後から雨みたいです』


甲斐さんの優しい笑顔に気持ちがほぐれる


傍にいるとリラックスできるよ


フラフラなんてもう言わせない


ちゃんと甲斐さんと付き合っていこう


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