くちびるが忘れない
気まずい重い空気のまま高速を下りて温泉街に入ってく


乗せてもらってるのに最低だよね


甲斐さんに頼まれて迷惑だっただろう


『課長…すみません』

「…訳わかんね。謝るな」

『私。別に課長にどこか行ってほしいとかは…』

「黙ってろ」


ピシャッと冷たく言い捨てられた


不覚にも目の奥が熱くなる


いつもこんなだね


矢野将太郎とは近づいたと思ったら勘違いなんだ


私の勘違い


18時52分


温泉着


『ありがとうございます』

「先に中入れ」


ふぅ…


時間もギリギリだし直接宴会場に向かう


『部長。遅くなりましてすみません』

「結城さん間に合ってよかったよ」


何故か部長の近くに特別席用意されてて


…颯太の仕業だな!


「おぉ~矢野課長も到着したし始めるか」


部長の挨拶からスタートする部内宴会


すでに温泉に入ってくつろいでる人がほとんどで


毎年無礼講でぐだぐだの飲み会に発展してく


「奈生~お前部長のトコ行け」


うるさい!颯太!


言われなくても行くってば


でもその前に…


『中国おめでと』


小声で伝える


「えっ!お前何で」


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