くちびるが忘れない
丸い目をさらに丸くしてる颯太をほっといて


『部長。いつもありがとうございます』


即席コンパニオン奈生に変身☆


我が部には若くて綺麗な女の子もいるのに


部長は何故だか私を御指名で


「結城さんは優し系だからね」


たぶん癒し系と言いたいんだろう


ものは言いよう


地味で目立たずは親父ウケはよかったりする


一通り部長にお付き合いしたら課長…


課長さんも色々います


矢野課長は一番年下だから最後に挨拶にいく


気まずさを引きずったまま


『課長。先ほどはありがとうございます』


言いながらビールを注ごうとしたら


スーッと手が伸びてコップの上を塞いだ


ドキッ


何?


私のお酌はヤダ?


「もう席戻れ。一通り回っただろ」

『…すみません』


ものすごくショックだったの


好かれてはないと思ったけど


そんなに嫌われてたんだ


泣きそうかも


席に戻って隣の席の人と話ながらも


チラッと見てしまう矢野将太郎


んっ?


見てたら…


他の人の酌も断っていた


私だけじゃないんだ


飲めないわけじゃない


お酒は結構強い方だって知ってる


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