くちびるが忘れない
何でこんなに気になるんだろ


もう関係ないのに…


最初から関係なんて躯しかなかったけど


「結城さん。飲んでますかぁ?」


後輩が次々とお酒を注いでくれて


断るのも面倒でグラスを空にした


フッ…気持ちいいかも


ちょっとフワフワして身体が熱くて


遠くでカラオケのマイクの奪い合いが始まるのを笑ってた


「奈生。飲み過ぎじゃねぇ?」

『颯太は飲んでる?中国赴任決定の乾杯しよ』

「うわっ!シーシー!声デカイ!」


あっ…まだ内緒か


とりあえず2人だけでコッソリ乾杯


よかったねぇ~


「奈生のおかげ。サンキューな」

『正しくは奈生元彼伝説のおかげでしょ(笑)』


まさか3連続とは確実に伝説だ


何がどうなってるんだか


って事は甲斐さんも今以上に昇っていくんだ


このままいっても幹部になる人


甲斐さん…


チラッと時計を見た


21時15分


早く来て…


私…寂しい


なぜか無性に甲斐さんに逢いたくなって


こっそり宴会場を抜け出してロビーに降りた


夜の温泉街にくりだそうと盛り上がるおじさんグループを横目に


窓際のソファーに大人しく座る


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