くちびるが忘れない
火照る頬に両手をあてて窓の外を眺める


ちょっと雨足も弱まったみたいだね


ぼんやり間接照明で浮かび上がる葉が落ちた木々が揺れて


なぜか怖くなる


私…1人だなぁ


甲斐さんの気持ちが見えない


どうして付き合う事になったの?


私を好き?


私は……


甲斐さんが好き?


「ねぇ~ねぇ~暇そうだね」


ドサッと音を立て隣に座り


図々しく肩を掴んできた


アンタ誰?


酒臭い息を吐きながら赤い顔を近づけてくる男


うぅぅぅ~うざい!


『暇じゃないし。触んの止めて!』


自分でも驚くような声で冷たく言い捨て押しのけた


「なぁ~んだよ。ちょっと遊ぼ~」


しつこいなぁ


さっきよりさらにくっついてきた酔っ払いを


手加減なしで思いっきり突き飛ばす


ドスッ!


「イッテェ~何だよ!」


酔ってるからって油断してた


すごい勢いで立ち上がり掴みかかってきた


『痛っ!ヤダ!』


グィっと引きずられそうになってソファーにしがみつく


さっきまであんなに人がいたのに何で1人も残ってないの?


フロントからも死角になってる窓際


「離せよ!酔っ払い!」


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