くちびるが忘れない
あっ…


振り解けずにいた私から酔っ払い男を突き飛ばし


二の腕掴んで私を連れ出した


「姿見えないと思ったら何で酔っ払いに絡まれてんだ?」

『…酔い覚まししようと思って』


バツ悪い思いで颯太を見上げた


明らかに飲み過ぎてる私を心配そうに


でも呆れ気味に見てる


颯太にはわかんないよ!


だって…私にもわかんないのに


『とりあえず部屋行って休憩する。ありがと~颯太』

「あぁ~一緒行く。お前また変なのに捕まりそう」


いつもなら3倍返しで言い返すけど


今の私には無理だ


無言でEVホールに歩き出す


ついてない時はどこまでもついてない


「あっ…お疲れ様です。課長も部屋戻るんですか?」


EV待ちをする矢野将太郎と鉢合わせ


私達をジィ~と見てからEVに視線を戻す


「仕事の電話待ち。坂本幹事だろ。部長探してたぞ」

「ゲッ!ヤバッ!奈生ごめん。俺戻る」

『うん。ありがと』

「課長すみません。奈生お願いします」


ハッ?!


急いで走ってく颯太を見送りながら


回転の悪い頭をフル回転


ねぇ…何を言った?


「結城さん」

『は…ぃ』


ドキッ


< 63 / 77 >

この作品をシェア

pagetop