化学式で求められないもの
私は高校卒業後は、いとこが経営しているプラネタリウムで働くことになっている。進路のことで悩んだりする心配はない。でもみんなは違うんだ。

友達がいないことは残念だけど、一生に見ることができるかできないかの流星群は見ておきたい。私は天体観測に胸を弾ませた。



帰りのホームルームが終わった後、学校の屋上に天体観測で使うフィールドスコープなどをセットし、必要な道具を科学部の部室から借りた。

寝転んで流星群を見られるようにレジャーシートを敷き、お腹が空いてもいいように食べ物を用意する。腕時計や星座早見盤、方位磁石の用意も忘れない。

前に星を見た時、友達や科学部の人たちとワイワイ騒ぎながら星が見えるのを待っていた。しかし、テストが近いためか屋上にいるのは自分だけだ。恐らく今回は一人での天体観測だろう。

「静かなのもいいかな」

そう言い胸にある寂しさを誤魔化し、夜が来るのを待った。

スマホをいじったり、歌を口ずさんでいるうちに夕暮れがゆっくりと訪れ始める。空にまだ星はないけど、この空も綺麗だ。
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