化学式で求められないもの
「あれ?織里奈?こんなところで何してるの?」

聞きたくなかった声に、私は現実に引き戻される。ゆっくりと振り向けば、先生が立っていた。私は先生から目をそらす。

「……流星群を見るんです」

「目をそらさなくてもいいでしょ?冷たいなぁ〜」

私が科学部に入部しなかったのは、先生が顧問だからだ。楽しい部活の時までいじめられたくなんかない。

「織里奈はホントに星見るのが好きだよな」

そう言われ、私は顔を上げる。気がつけば先生は隣にいて、私と同じように空を眺めていた。

「どうして知ってるんですか?先生、天体観測の時っていつもいないじゃないですか」

「科学部のやつが話してたの!」

先生はそう言って私の頭を犬のように撫でる。ビクッと一瞬してしまったけど、大きなその手は優しく私を撫でてくれて少しだけ緊張がほぐれた……かも。

「神話の本を図書室で借りてるって聞いたから授業で話してもらおうと思ったのに……。あんな顔真っ赤にして抵抗しなくても」
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