化学式で求められないもの

「へえ、さすが神話好き。そういうのを授業で言ってくれればいいんだけどな〜」

意地悪そうに笑う先生に、「無理ですよ！」と言う。こんな話、同じ神話好きの人としかできない。

「で、続きは？まだあるんだろ？」

知ってるくせに、と思いながらも私は続きを話す。殺されそうになった二人だったが、二人を哀れに思ったゼウスが空から黄金の羊を放って二人を助けさせるんだ。そのお手柄から、その羊は夜空に輝いている。

「おお〜！なるほど！」

先生はわざとらしく拍手をする。私が恥ずかしがっているのを知ってるみたいだ。いや、先生は何もかも最初からお見通しなのかも。

「じゃあ、天秤座は？乙女座は？山羊座？」

先生が次々に神話を話すよう急かす。私は恥ずかしいと思いながらも話した。そうしている間に時間はどんどん過ぎていく。

「お、星が見えてきたな〜」

蟹座の話をし終わった頃、空を見上げるといくつも星が輝いていた。とても綺麗。私は、こんな空が大好き。時を止めてしまいたくなる。