冷徹竜王の花嫁Ⅰ【完】
「………難しくないの?」
「大丈夫ですよ。直ぐに終わります」
正直、今良いところなので本は読みたい。
(クランベルが戻って来てからでも、遅くないよね?)
そんな私の心の中を見透かす様に、侍女が口を開く。
「クランベル侍女長は、遅くなられる見たいですよ」
「…え!そうなの?」
「先程、その様に連絡を受けました。ですので、先に行かれてはいかがでしょうか?」
クランベルは確かに『直ぐに戻ります』と、この部屋を後にする前に話していたけれど。
他にも用事が出来たのかもしれない。
(…………直ぐ終わるって言ってたし。クランベルが戻ってくる前に帰っていれば問題ないよね?それも侍女が一緒だし)
本を机の上に置くと、椅子から腰を上げる。
年の為に留守番は、他の侍女達に任せよう。
「では、ご案内致します」
提案してきた侍女は嬉しそうに、廊下を歩く。
「こちらでございます」
「ここ?」
辿り着いた先は、先程いた部屋からだいぶ離れた一階にある一室。
室内は片付いていて、余計なモノは置かれていないといった感じだ。
壁際にはカーテンが掛かっている。
「護衛騎士様は廊下にてお願い致します」
「何でだ?」
頭を下げる侍女に、ここまで付いて来た護衛のテオビュークは聞き返す。